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2016.02.16研究成果

休眠期に放射性セシウムに汚染されたモモおよびカキにおける高圧洗浄機を用いた樹皮除染の効果

【原題】 Decontamination effects of bark―washing with a high-pressure washer on peach (Prunus persica (L.) Batsch) and japanese persimmon (Diospyros kaki Thunb.) contaminated with radiocaesium during dormancy

 

発表者

高田 大輔 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 附属生態調和農学機構 助教) 【共著】

 

発表の概要

 福島県農業総合センター果樹研究所、東北大学、学習院大学との共同研究をまとめた論文になります。福島第一原子力発電所事故以降、放射性Csによりモモやカキなどの果樹の樹体も汚染されました。樹体に直接降下した放射性Csは樹の表面の樹皮にかなりの割合で存在していることが解っています(高田ら、2012)。そこで除染対策の1つとして、事故後の7月に試験的に樹皮を高圧洗浄機でそぎ落とす作業を行いました。その結果、樹体表面の高濃度に汚染された部位を取り除くことにより、収穫果実の放射性Csの移行を抑えることができるという成果を得ました。加えて、この作業(樹皮の除染)には、作業者に対する被ばくを少しでも低減する意味合いもあります。

 この結果を基に、その冬(2011年度冬季)に汚染園地における除染の一環として、樹皮除染が福島県内で実施されました。放射性Csの降下という、前例の少ない事故の対処としては、どうしても試行錯誤しながらの対策となるため、実際に行った対策の成果を検証する試験が多くなります。そういった状況の中、本研究の成果は、現場での対策提示に直結した試験であると考えています。

 

発表誌情報

Sato, M., Abe, K., Kikunaga, H., Takata, D., Tanoi, K., Ohtsuki, T., and Muramatsu, Y. 2015. The Horticulture Journal, 84(4):295-304.

URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/hortj/84/4/84_MI-054/_article