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ドローンとAIで規格外野菜を減らす ――畑全個体のサイズを自動計測し、最適な収穫日を推定――
発表のポイント
- ドローン空撮と深層学習によって、畑で栽培しているブロッコリー全個体の花蕾サイズを自動推定・予測し、最適な収穫日の決定を支援するシステムを構築した。
- 農業現場での応用を見据え、一部が葉で隠れていても予測精度が高く、かつ計算時間が短くなる工夫を行った。
- このシステムは規格外野菜を減らすことで、生産者の収入を増やし環境負荷を減らせる可能性がある。
発表概要
東京大学大学院農学生命科学研究科郭威准教授、Haozhou Wang大学院生、Tang Li大学院生、西田えり佳大学院生(当時)、加藤洋一郎教授、千葉大学大学院園芸学研究院の深野祐也准教授らによる研究グループは、ドローン空撮と深層学習を用いて、畑で栽培している数千個体のブロッコリー花蕾の大きさを自動で推定するシステムを開発しました。また、このシステムを用いて収穫日を決定することで、規格外野菜の割合を最小化し生産者の収入を増やす可能性を示しました(図1)。開発したシステムを検証するために、圃場で2年間にわたってブロッコリーを栽培すると同時にドローン空撮をおこないました。その結果、開発したシステムを使うと、ブロッコリーの花蕾が高精度(多くが2-3cm以内の誤差)で推定でき、気象データと組み合わせることで約10日後まで予測できることが分かりました。さらに、ブロッコリーの全個体のサイズ変化と、サイズごと(S, M, L, LL)の出荷価格を組み合わせ、全個体を収穫したと仮定したときの総出荷価格(=生産者の収入)を日毎に計算しました。すると、収穫日が1日変わるだけで規格外が最大約5%増加し、収入が最大約20%減額することがわかりました。この成果は、全個体の大きさを測定するというシンプルな技術が、規格外野菜を減らし、収入の向上と環境負荷の低減という一挙両得につながることを示唆しています。このシステムは、キャベツやハクサイなど様々な露地野菜に応用可能です。今後、このシステムを発展・実装することで、持続的な農業に貢献することが期待されます。論文の概要は以下のビデオでご覧になれます。
参考動画:https://youtu.be/SYuOCVqgtrU
発表者
東京大学大学院農学生命科学研究科
郭 威(Wei GUO)(准教授)
Haozhou Wang(博士課程)
Tang Li(博士課程)
西田 えり佳(Erika NISHIDA)(修士課程:研究当時)
加藤 洋一郎(Yoichiro KATO)(教授)
千葉大学大学院園芸学研究院
深野 祐也(Yuya FUKANO)(准教授)
発表雑誌
- 雑誌
- Plant Phenomics
- 題名
- Drone-based harvest data prediction can reduce on-farm food loss and improve farmer income
- 著者
- Haozhou Wang, Tang Li, Erika Nishida, Yoichiro Kato, Yuya Fukano, and Wei Guo
- DOI
- 10.34133/plantphenomics.0086
- URL
- https://spj.science.org/doi/10.34133/plantphenomics.0086
研究助成
本研究は、JST AIP加速課題「ビッグデータ駆動型AI農業創出のためのCPS基盤の研究(課題番号:JPMJCR21U3)」、 東京大学大学院農学生命科学研究科「農学創発基金(2020年度)」の支援により実施されました。